[by ジョージ]
単調な風景に、私はいい加減ウンザリしていた。
いつ途切れるとも分からない杉林。
ウネウネと大蛇のようにうねるカーブの連続。
風景は何も変わらないのに、
両脚の疲労だけが、ますますひどくなっていく・・・。
私は今、峠道を自転車で上っている。
花脊峠の頂上を目指して。といっても、裏花脊ではあるが・・・。
もうひとりぼっちになって、どれくらいの時間が過ぎただろう・・・。
遠く、杉林の切れ間に彼の後ろ姿を最後に見たのは、30分ほど前だったろうか・・・。
どうも、はじめまして・・・。
新人、おっさんのジョージです。
今日は チーム The☆whooの練習走行の日。
いつものように「ゆったり組」に参加し、
六丁から神明峠、そしてここ細野まで、
いつものコースを、たくやリーダー、居留守☆王子クン、
アーサークンの4人で気持ちよく走行。
でも今日の私は、ある決意をもってこの練習に参加していた。
京都南部に住む私にとって、
京都北部にはまだまだ自分が走ったことのない峠がたくさんあり、
その中でも「はなせ」というこの3文字の峠は、
自転車初心者の私にとっては異様な存在感を放っていた。
一度どんな所か見てみたい・・・。
冬が来る前に一度くらいは挑戦しておきたい・・・。
でもいきなり「表」からでは無理かもしれないので、
とりあえず「裏」からでも挨拶させてもらいたい・・・。
そんな思いが募った結果、
「明日、六丁コースの途中で、細野から栗尾峠へ抜けて裏花脊へ行こう・・・。」
前夜に地図を広げながら、そんな事を考えていた。
それに、
いつものコースを走り終えて、早く家に帰ったところで、
嵐のコンサートDVDを見ながら、リビングで狂喜乱舞しているであろう、
カミさんと2人の娘の姿を想像すると、家に帰るよりは自転車に乗って苦しんでる方が、
そして自分の世界に浸っている方が楽しいに違いない。
そんな思いを胸に、集合場所へ向かったのだ。
そして細野での休憩後、私は、
前日も走りまくって「ケツ筋がパンパンです」なんて言ってたにも関わらず、
「一緒に行きましょう」と言ってくれた居留守☆王子クンと共に、
栗尾峠を上っていた。
栗尾峠〜黒田〜大布施と、絶えず私を先導してくれた彼は、
裏花脊の上りに入ってもペースを落とすことなく、
早々と私の視界から消えていった。
ひとりぼっちになった私は
ひたすらペダルをこいだ。
聞こえてくるのは川のせせらぎと
自分の息づかいだけ・・・。
時折、私を邪魔者扱いするように、
車がハンドルを切りながら横をすり抜けていく。
「ふん!エラソーに走るなよ!
クッサイ排気ガス出しやがって・・・」と
クサイ息を吐きながら思うのである。
それにしても長い。
あとどれだけ走れば頂上に着けるのか?
この先、もっとキツイ上りがあるんだろうか?
初めて走る峠だけに、全く見当が付かない。
家を出てからの走行距離はすでに3桁になっている。
正直、もう太股はパンパンで今にも脚がツリそう・・・。
不安だらけの今、サイコンのタイムだけが唯一の拠り所である。
裏花脊の入口近くのJAで休憩した時の
王子くんの言葉を思い出す。
「頂上までは40分くらいで着くんじゃないですか・・・。」
サイコンはもうすぐ40分の経過を示そうとしている。
でも考えてみれば、彼と私ではペースが全く違うわけで、
私の貧脚ではもっと時間が掛かかるであろう。
とにかく、いつ終わるとも知れない坂道を、そしてカーブを、
ひたすら自分の後方に追いやろうと必死でもがき続けた。
と、その時である。
前方のカーブから1人のサイクリストが颯爽と現れた。
それは、もうすでに頂上で待っているであろうと思っていた、
居留守☆王子クンだった。
あまりに私の到着が遅いので、頂上からわざわざ引き返して
様子を見にきてくれたのだ。
その現れ方があまりにも格好良く、疲れ切った自分にとっては、
その姿はまさに救世主であり、ヒーローであり、
白馬に乗った王子様ならぬ、「ケルビムに乗った王子クン」であった。
もし私が、うら若き乙女であるなら、心ときめかせ、一瞬で恋に落ち、
峠下の「くらま温泉」で2人でしっぽりと・・・。
なんて展開になってもおかしくない状況である。
しかしながら、私は妻子あるオッサンの身。
ナイスなシチュエーションでありながら、
キャスティングのマズさから、
これ以上の展開が無いことをすまなく思うのである。
(この王子くんに限らず、The☆whooのメンバーはみんな思いやりのある
ナイスガイばっかりで、ほんと一緒に走っていて楽しいチームです。)
そうして、王子くんの後方からの励ましの甲斐あって、
なんとか私も無事頂上に到達。
その後はヘロヘロになりながらも、
なんとか帰路に着いたのでした。
そしてその夜、心地良い痛みを両脚に感じ、
ベッドに横たわりながら
帰りの休憩中に王子クンの言った言葉を思い出す。
「次は『表』ですね」
犬だか猫だか忘れたが、相手を知るためにオケツのニオイを嗅ぐという。
そういう意味では、私は花脊のオケツを知ったわけで、
すでにシリ合いであり、
次は表からご挨拶してもいいかもしれない。
来るべきその時の状況を想像すると、いささか不安ではある。
その時のために何か特別に備えなければならないのでは・・・と。
タイヤ?
ホイール?
いやいや、もっと大事なモノを忘れていた。
それは・・・、
万一、心ときめいた時に恥をかかないための
とびっきりの勝負パンツ。
それは、次また峠で出会うかもしれない、新たなる王子様のため・・・でもあり、
いつか自分が王子様になった時のため・・・でもある。
店長さん、
そんなパンツ、売ってません?? よねぇ・・・。
ここに書いてある 王子 が、自分だと気付くのに時間がかかりました。かっこよさ8割り増しで書いて頂いて、ありがとうございます。
投稿情報: 居留守☆王子 | 2009/10/29 22:53
ちょっとカッコ良く書きすぎました?(笑)
いやいや、マジでほんま助かりましたよ。
それにめっちゃ気持ちよくて楽しかったです。
またお願いします☆
投稿情報: ジョージ | 2009/10/30 12:42
ええ勝負パンツありまっせ~!!
・・・が聞こえませんねぇ(笑)
じゃあ、今度は僕の☆王子様☆になって下さい
白いウインドブレーカーのペアルックで・・・
投稿情報: メンテ | 2009/10/30 15:25
臭くないっす!ジョージさんの息は臭くないです!
投稿情報: ノスタルジック | 2009/10/30 20:21
>メンテさん
いいですねぇ、勝負パンツもペアで揃えましょか。
>ノスさん
息だけやないんです、クサイんは・・・。
いわゆる加齢臭ってやつです。
投稿情報: ジョージ | 2009/10/30 22:30