ベタベタと甘えるような年齢でもないし、二人の間にある距離感が私には心地良かった。冷めているわけじゃあない。ただ少しばかりドライなだけだ。それはまるでTACURINO(タクリーノ)チェーンルブリカント・ドライのように。完全に脱脂されたピッカピカなチェーンによぉ〜っくシェイクしたコイツをスプレーし乾かす。するとどうだろう。触ってもべたつかない 手が汚れない 完全にドライなチェーンが出来上がる。こいつぁ良い。滑らかさで言えば同じタクリーノのチェーンオイルのほうが良いような気がするが、正直、私には問題の無いレベルだ。
すまない。少しばかり話が自転車のほうに脱線してしまった。
1インチはありそうなヒールを履いている彼女の姿を私はベットで横になりながら見つめていた。私の視線に気付いた彼女はどこを見るわけでもなくこう言った。「寂しがり屋の少女にこのハイヒールは履けなくてよ。」力強くひかれたアイラインに1インチのハイヒール。私は何故かその下に「寂しがり屋な少女」が押し込めているような気がした。彼女はきっと私じゃない誰かの前では少女でいられるのだろう。そう思うと少しばかり寂しかった。この街でやって行くにはタフでなければ務まらない。彼女はそれを良く知っているし私もソレを解っているつもりだ。帰ろうとする彼女が玄関の壁に立て掛けられているロードを見て私にこう言った。
「ねぇ、チェーンのオイルがきれているわよ。」
私はベットから起き上がり言った。
「それで良いんだよ。完全にドライなやつなのさ。」
彼女は驚いた様子も無く「今はそんなのもあるのね。」っと言った。私は彼女のほうに歩きながら言った。
「これなら手を汚さずに済むし、手袋いらずさ。」そう言うと彼女は小さく「へぇ。」と言い 少しばかりの間を空けてこう言った。
「ねぇ?てぶくろを反対から言ってみて!」
悪戯っぽい彼女の表情に不意をつかれた私は訳も解らず答えた。
「ろくぶて。」
すると彼女は私を6回ぶった。理解できないでいる私に彼女は少女のような笑顔でこう言った。
「6ぶてって言ったでしょ?」
ジーザス・クライシス!
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