[by 居留守☆王子] 2010/5/30
「で、どうするの?」
小さなフランス料理屋でメインディッシュに出てきた「手長海老の香草焼き」に悪戦苦闘している私に彼女は訊いてきた。
「明日のレース。なにか作戦があるんでしょ?」
どこからどうやって食べるのか解らない手長海老の両手をナイフで切り取りとりあえず普通の海老にしてはみたが事態は何も変わらなかった。「あるよ。」海老との闘いを一度中断し彼女の質問に答えた。その昔。まだ私が幼少の頃、私は京都は花園という所に住んでいた。そして私はその花園で幼少の頃まわりからこう呼ばれていた。 「花園の麒麟児」 そんな私が初のロードレース(C4初心者クラス)に無策で挑むことなどありえない。もちろん彼女もそれを知ったうえで訊いてきている。
「聞かせてちょうだい。その作戦を。」
ナイフとフォークをおいて私は明日の作戦を彼女に打ち明けた。 作戦はこうだ。初めてのロードレース。正直にいうと右も左も解らない。どれ程のスピードなのか?いったい何人で走るのか?だが私には1つだけ解っていることがあった。それは走りながら選手は「ラインキープゥー」とか叫ぶということだ。それはコーナーを曲がるときなどに発生するらしい。「花園の諸葛孔明」と呼ばれた私はその情報だけで勝利へのプランが出来てしまった。まず出来るだけ脚を使わないようにしながらも何時でも飛び出せるように前のほうをキープする。そして九鬼ヶ坂を越えダウンヒルが終わった最初のコーナーで他の選手が「ラインキープゥー!」とか「減速ぅー!」とか叫んでいるなか私は静かに下を向きタイミングを見計らって誰よりも大きな声でこう叫ぶ。
「いらっしゃいませ、こんにちはわぁー!」
当然ながら周りの選手は「あれ?コンビニきちゃった。」ないし「あれ?ブックオフきちゃった。」となる。
さもあらん。その一瞬の隙をつき私はアタックにでる。そして優勝。
「素敵ね。そのファンタスティックな作戦が成功することを祈るわ。」そう言って彼女は席を立った。
美山ロードレース当日。私のレースはパンクで終わった。九鬼ヶ坂に行くこともなく。「花園の神童」の実力を発揮することなく終わったが落ち込んでばかりもいられない。次のレースに向けて練習をしなければいけない。そして新たな作戦を考えなければならない。
「お待ちのお客様、こちらのレジどうぞ~」と叫び、だれが前に出て良いかわからず集団をうろたえさせるという作戦もありです。
投稿情報: の | 2010/06/04 10:05
>ノさん
試しに声に出してみました。
噛み噛みでした。
投稿情報: 花園のアイルトン・セナ | 2010/06/04 17:57