[by papa] 2012.8.1
指導医「では今週の症例検討会を始めます。症例のプレゼンを。」
研修医「症例は45歳、男性。主訴は走行中の異音、振動です。現病歴ですが、いつものようにSMOに参加し、江文峠までは異常なかったものの、その下りで溝にハマった際に突然“バシュッ”という音とともに異常な振動が出現したとのことです。」
指「ところでSMOって何だね?」
研「毎週土曜日に行われているイベントで、Saturday Morning ride to Oharaの略だそうです。」
指「ふむ、楽しそうなイベントだな。続けたまえ。」
研「既往歴には、落車が一度。クリンチャーとチューブレスで1度ずつパンクしたことがあるとのことです。」
指「この時点での診断は何かね?」
研「“バシュッ”という音の後から異常な振動が出ていますので、おそらくパンクではないかと。」
指「なるほど。では詳しい身体所見を。」
研「はい。フレーム、駆動系、ブレーキ系には著変なし。タイヤはチューブレスタイヤを使用。後輪のタイヤの側面に約5mmの裂傷が認められました。カーカスがむき出しで、空気とともに白い液体が噴出していました。リム打ちは考えにくいので、溝にハマった時のサイドカットによるものでしょうか。」
指「他に変わった点はなかったかね。」
研「同行者が前輪の空気圧も異常に低くなっていることを指摘しました。よく見ると、こちらもタイヤサイドに小さな穴が開いていました。ただ小さな白いゴムの塊のようなものが付着し、空気の漏れが後輪に比べて少なかったので、自覚症状がなかったものと思われます。」
指「白い液体は“シーラント”といって、パンクした際に固まって穴を塞いでくれるというものなのだが、タイヤサイドだったり、穴が大きいとうまく塞がらないようだね。で、現場での治療はどうだった?」
研「まず、パッチにて内側からの閉鎖が試みられました。ただシーラントがあるとヌルヌルしてやりにくいようです。まず、ジョージさんのポケットのティッシュを使って創部をきれいにしました。ヤスリをかけて、ゴム糊を塗って乾かし、パッチを貼付。これで治るかと思われましたが、空気を入れても漏れてしまい治療は失敗でした。パッチからの漏れかと思われましたが、後日の精密検査では、パッチは問題なく、ただビードがうまく上がらなかったことが原因のようでした。」
指「次の手段は何かあったのかね?」
研「はい、予備のチューブを入れてみましたがこれも失敗に終わりました。おそらくタイヤを嵌めるときに噛み込んだ可能性が高いですが、もともとチューブに穴が開いていた可能性も否定できません。またC02ボンベを2本使用していますが、2本目にはバルブのパッキンのゴムが飛び出るという前代未聞の合併症が発生しました。」
指「先週、どこかでみたような光景だね。こういう事故は続くときには続くというからねぇ。で、その後の経過は?」
研「はい、この時点でかなり治療に時間がかかっており、患者はすでにヤル気をなくし、自分の脚での帰宅を放棄してしまいました。財布の中には70円しかなく、熱中症の可能性もでてきたので、家にいた妻を呼び出すという裏技を使用しました。」
指「なんと!それで無事に帰れたのかね?」
研「妻の機嫌が良かったようで、文句も言わずに一度も来たことのない大原里の駅まで車で回収に来てくれたとのことです。ただ、患者は待つ間1時間ほど日向にいたので、自転車に乗るよりひどい日焼けをきたしました。」
指「普段から妻には優しくしておくと、いざというときに助けてもらえるといういい話だな。2週連続のチューブレスパンク、しかも前後輪同時のパンクという珍しい症例の上に、妻が回収しにきてくれるといういい話までついている。キミ、ぜひ論文を書いて”The☆whoo”に投稿しなさい。」
papaです。先週と同じような笑えないようで笑える話です。
この2週間でいろんなことを学びました(笑)次は大丈夫です(たぶん)。ではまたSMOでお会いしましょう!