[by 居留守☆王子]
☆注意 とても長いです☆
「ヒルクライムって、しんどくない?」
何故か話題は週末の過ごし方の話になり
私は、自転車で山に登っていると答え、
そして世の中には、ヒルクライムというレースがあるといぅことを彼女に話した。
少し興味を持ったのか彼女が聞いてきた。
「確かにしんどいし辛い。」
私は、吸いかけのタバコを灰皿に押し付けるようにして
火を消しながら静かに答えた。
「じゃあ何故、登るの?」
部屋に差し込む強い夕陽が、彼女の顔を少し
赤く染める。明かりという明かりを吸い込んだような
光り輝く彼女の視線から目をそらし、
窓から見える夕焼けを見ながら
私は答える。
「何故だって?」
冷め切った珈琲を一口飲んで、私は続けた。
「探し物が見つかるような気がしてね。」
右手の人差し指と中指を彼女にむけ拳銃を撃つ真似をする。
彼女は少し困惑したような顔をした後、プッと吹きだしこう言った。
「ビンゴ。」
探し物は意外と早く、見つかるものだ。
土曜日、チーム練習に参加しS軍塚を4本登る。
2本目を登っていたとき、私はガードレールの下で捨てられているソレを見つけた。
急に現れた光り輝くソレは、誕生日が近いこともあり
神様からのプレゼントのようにも思えた。
しかし、チーム練習中であるため途中で止まるわけには行かない。
タイミングの悪さから神を罵る言葉を吐き出した後、空を見つめ
「悪くない。」と、言った。それは、HなDVDだった。
探し物は意外と早く、見つかるものだ。
日曜日、快晴。昨日のアレを確実なものとするため、一人S軍塚に向かう。
一本目。落ちていた場所を確認するためゆっくりと登る。
確かにそいつは昨日と同じようにソコにある。展望台まで一定のペースで登り一息つく。
「やれやれ、今日はハードになりそうだ。」 そう言って私はダウンヒルを開始する。
2本目。確実なペースでソコまで登り、アソコでケイデンスを少し落とす。
息を落ち着かせ情報収集に神経を集中させる。
作品の方向性、趣味、何を中心にストーリーがすすむのか?タイトルから作者の何をくむべきか。
それらをこの1回の登坂で、全てやって終おうというのだ。
しかし、自体は思わぬほうへと向かった。
「ホーリー・シット!」私は思わず声を荒げてしまった。
なんてことだ、そのHなDVDは裏を向いていたのだ!
しかも、裏面に施された作品の紹介写真みたいなものが異様に小さい。
小さくカットされた写真が無数にびっしり配置されていたのだ。
レンタルビデオ屋で手にとって吟味するには良い、内容が良く分かり過剰とも言える
サービスに私は心打たれたかもしれない。しかし私は今、自転車で登坂中だ。
小さな写真をいっぱい並べて、遠くから見ると人の顔になっている的な写真の小ささ。
何も見えやしない、私はその場を通り過ぎ、将軍塚と、どっかに行く分かれ道から
ケイデンスを上げて、自分なりに追い込みをやってみる。
3本目。チラリと見る。相変わらず何も分からない。
これをアソスの背中のポッケに入れて、確実に収まりきらないであろう
ソイツをチラつかせながら白昼の大通りを帰る勇気は私には無い。
そんなことを考えながら、また同じところから追い込む。
4本目。未練がましくチラ見。そして追い込み。
5本目。4本目と同じ。息を荒げ頂上に着いた時、そこで私は悟った。
見えないものは何度やっても見えない。もぅ次で最後にしよう。そぅ、腹に決めた。
6本目。スタート地点から山を見上げる。太陽は大きな雲の裏側に落ちてしまった。
さぁ行こう、何も無い。ただ、やるだけだ。そして最後のヒルクライムを始める。
今日は何度ココを通っただろう。もぅこれが最後だ、HなDVDを前に視線隠しの
アイ・ウェアを敬意を込めて外す、そして海兵隊がするような敬礼し、その場を通り過ぎる。
その時、背中のほうから何処かで聞いたような声が聞こえてきた。
「ビンゴ!」
振り返るな、振り返っても明日は無い。