[by papa]
2009年7月25日、私は吉野にいた。翌日の第6回山岳グランフォンドin吉野に出走するためである。コースはその名のとおり、紀伊山地の中を走るタフなコースである。最長はスーパーロングコースの210km。私はちょっと気弱に130kmのロングウェストコースを選んだ。短いとはいっても激坂の峠4つを上らないといけない。坂が苦手なはずなのに、やはり私は自転車バカのようだ。
宿について心拍センサーを忘れたことに気づいた。明日はゆっくり行こう。夜は早々に眠りにつくが、ここでも試練は待ち受けていた。男8人相部屋というむさくるしい中で高らかにいびきが響き渡る。「神様の試練に違いない」と思いつつ明け方にようやく2時間程度睡眠をとる。
翌朝は晴れた。7時になりスーパーロングコースから出発していく。7時30分、ようやく私のスタートの順番が回ってきた。ゆっくり行くはずだったのだが、誰一人私の前に出ない。まさかの状況に調子に乗ってしまった。最初の峠を越えるまでに何人抜いてしまったことだろう。後先を考えずに行くときは行く。The☆whooのモットーである。第1給水所ではわずかの水分を口にし、針葉樹の落ち葉が積もる長い芹生峠のような下りを、落車の恐怖におびえながら歩くような速度で下っていく。
第2給水所に向かう峠越えでは雨が降り始めた。神様はやはり楽をさせてくれないらしい。土砂降りの雨のなか、ようやくたどり着いた給水所の女性が女神のように見えた。バナナとパワーバーをほおばって、まだ降り続く雨の中を下っていく。さらに峠を2つ越えた。ここにいたってようやく吉野の山の厳しさに気がついた。単純な上りが一つもない。上りきったと思った先には必ず激坂がそびえている。激坂の波状攻撃に何度心が折れそうになったことだろう。
昼過ぎにエイドステーションに到着できた。ここの係の人たちの拍手、労いの言葉は忘れない。おにぎり、柿の葉寿司、豆腐(絶品!)、梅干、バナナ、オレンジが空腹を満たしていく。脚の張りはもう限界だが、気力は復活した。あと50kmだ。ここからは小さな峠を越えたら長い下り。この10kmの下りは試練に耐えたご褒美に違いない。緩やかなカーブが連続する”激長い”下りで思わず叫んでいた。「めっちゃ気持ちえぇー!!」。ただのバカである。
最後の給水所からは残り30km。道中、抜きつ抜かれつしていた大阪のTCR乗りの方と先頭交代しながらゴールに向かう。最後の2kmの上りでちぎられはしたが、ゴールはすぐそこである。また雨が落ちてきた。汗だか涎だか雨だかなんだかわからないものでびしょぬれになりながらゴールをくぐった。ちょうど7時間であった。
吉野の暑い夏の一日が終わった。大会関係者には厚く御礼を申し上げたい。ゴール直後は「峠はしばらくごめんだ・・・」と思っていたが、5分後には「来年はロングイーストを走ろう」と考えていた。やっぱりかなりの自転車バカである。