[by ハカセ] 2012.10.5
先日、チームのメンバーが、北白川にツキノワグマが出没したというニュースを知らせてくれました。
驚きですね。
ツキノワグマといえども、遭遇したら危険です。
もちろん私も山を走る際は警戒してました。
はい。
でもね、
出たんですよ
あいつが・・。
黒いあいつが・・・・・
で、今回の日記は、先日私が体験した「たった5秒間の出来事」を、長々と 書き綴ったものです。
今回も長いですから、めっちゃ暇な人だけ読んでね。
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先日、久しぶりに朝練です。
ウッディー→広河原→佐々里→美山→周山→ウッディー
という、いつもの80 km周回コースのタイムアタック。
もう9月も半ば近くになって、とても涼しくなりました。
表佐々里の登りで過去最速ラップをたたき出し、気分よく裏佐々里を下って いた時のこと。
つづら折りの急斜面を抜けて、緩やかにワィンディングした場所に出た瞬間、
ぱぉ!
うわぁ!!!!!!!!
ぎゃぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
何じゃあの黒い生き物は!!!!
出たか!!?? ついに。
ヤツですよ、ヤツ。
ニュースになっていた、あれですよ、きっと。
間違いない。
ヤツが、ヤツが、ついに今私の目の前に現れました。
目の前に、「真っ黒い」、「四足歩行」の「未確認」物体が・・・・・。
あぁ・・・・・・、これだけで心臓止まりそう。
もう死ねる・・・・
なんで、なんで、よりによって今なんですか。
なんで、なんで、よりによって私なんですか。
神様、わたし、なんか悪いことしましたか?
しかも、しかもですね、そいつが道を1/3ぐらい塞いでるんですよ。
はい、もう詰みました。
無理です。
死を覚悟しました。
ごめんね、嫁、娘、息子・・・
パパが自転車なんかにうつつを抜かすから・・・
パパが張り切って朝練なんかするから・・・
パパがロードバイクなんか買うから・・・
パパの家の近くにちょっと小洒落た自転車屋ができたから・・・・・
そこの店長が無理矢理バイクを買わそうとしたから・・・・
イヤイヤ
さて、どうしましょう。
どうします?
敵との距離約100メートル。
言っておきますけど、みなさん、ここは佐々里の下りです。
軽くワィンディングしてるけど、おそらく時速40 kmは出てるでしょう。
秒速11 mです。
いいですか、あと数秒で敵と接触です。
接触?
接触って、= 死 DEATH。
いいですか、とにかくあと0.何秒かのうちに決断せねばならないんです。
逃げるのか、戦うのか。 (イヤイヤ、戦うて・・・・)
こういう瞬間って、本当にいろいろなことを考えますよね。
実際には一瞬なんだろうけど、何秒も時間が過ぎたように感じる。
こういうのってありますよね?
「未確認 四足歩行 真っ黒い」が私の目に飛び込んでからおよそ1秒間。
今振り返ってみると、私はこんなことを考えていました。
あ、クマだ!
あの大きさからすると間違いなくツキノワグマだ。
ヒグマではない。
とすると、やっぱり先日ニュースになっていたやつか・・・
しかしここは美山。大原からは相当離れてる。
いくらクマでもそんな距離を数日で移動するんか?
いやいや、別のクマかもしれない。
うん、きっとそうだ。
美山にはクマがいる。
そういえば、ウッディーで剥製をみたぞ。
ということはエサが少なくてここらを徘徊してるんだな。
まぁ、ヒグマでなければ、一撃での瞬殺は避けられるな。ヨシヨシ
いや、まてよ。
あの背中の角度・・・・・・
クマにしては不自然やな・・・。
四足歩行にしてはやけに起立している。
!?!?!?
まさか!!
ゴリ ラ!!??
いやいや、それはないやろ。
ここに野生のゴリラがいるわけない。
うん、きっとツキノワグマだ。
いずれにせよ、危険な相手であることにかわりはない。
問題は、ブレーキするか、突破するかや。
この距離だと、うまくブレーキングすれば敵の手前20メートルぐらいで止 まれるな。
そこでもし敵が襲ってきたら反対方向に逃げる。
よし、これなら安全だ。
朝練は中止だけど、ここは仕方ない。安全に安全に・・・。
いや、まてよ・・。
このシューズで走って逃げるのは無理やろ。
やっぱ自転車のままか。
迷うなぁ・・・
方向転換せなあかんけど、シューズで走るよりは安全やろ、きっと。
いやいや、まてまて。よく考えろ。
自転車で反対方向に逃げるってことは、裏佐々里の登りやぞ。
万が一、敵がずーーっと追いかけてきたらどうすんねん。
登り続けなあかん。
今足が疲れてるから、どんなに頑張っても時速25キロが限界や。
ツキノワグマの平地移動速度は・・・・・
あぁ、やっぱり無理や、時速25キロってことはない。
絶対に追いつかれる。
あいつら、あぁみえて、本気出したら脚速いんやろ。
あぁ、どうしよ。
やっぱり突破しかないか・・・。
あの隙間をフルスピードで抜ければ大丈夫かもしれん。
幸い、相手はまだこちらに気づいてないみたいやし・・・・。
いや、でもまてよ。
気づかれるのは時間の問題や。
ツキノワグマなら人間にびっくりして逃げてくれればいいけど、
逆にびっくりして襲いかかってこられたら、絶対に避けられへん。
自転車に乗ってるから防御姿勢も無理やん。
自転車の上で戦うとかむりやろ。
騎馬戦ちゃうねんから。
それに、もし、もしやで、
ゴリラやったらどうす る!!
あいつらの瞬発力と攻撃力といったら、異次元やろ。
体当たり、もしくは右手の一発で終了や・・・
あぁ・・・
詰んだ・・・・
どうしよ。
しゃーない、ここは一か八か
クマに気づかれないように、マッハで横をすり抜けるしかない。
もうそれしかないわ。
はい。
こんなことを一瞬で考えました。
人間の脳ってすごいですね。
でもね、決断の瞬間は待ってくれません。
無駄な時間は一瞬たりとも無いんです。
秒速11メートルで敵に向かって突進してますから。
すでに敵との距離は100メートルを切りました。
で、意を決してスピードを上げようとペダルに力を入れました。
頼 む!!ゴリラでなく、クマであってくれ!!
そう願って踏み込んだ瞬間、
立ったーーーーーーーー!!!!
うそーーーーーーーーーーーーーーーーん。
しかもこっち向いてるみたいーーーーーー
えええぇぇぇ----
気づかれるの早い!!!!
あぁ、もうね、
完全に作戦失敗ですよ。
詰んだ詰んだ。
あわよくば、気づかれずにあの横をすり抜けようと思ったのに。
この時点で気づかれたら、無理でしょ。
いくら機動力の低いクマでも、この距離なら、接触までに間合いを詰めてき ますよ。
で、右手の一発で試合終了。
あぁ、短い人生だった。
ごめんね、みんな。
ほぼあきらめかけたその瞬間のことです。
戦意喪失のライダーにあるひらめきが。
そうだ!
クマに出会った時は大声を出すんだった!!
そしたら、クマがびっくりして逃げてくれるかも。
よし、もうこれしかない!
人間って偉いのか愚かなのかよく分かりません。
悪あがきもいいところ。
想像してみて下さい。
チームジャージを着たライダーが大声を出しながらクマに突っ込んでゆく姿 を・・。
もうね、笑うしかないでしょ。
でも本人はいたって本気なんですよ。
ありったけの大声を出して敵を威嚇する!
こちらが怯んではいけないのです!
相手の目を見て、大声で突進してゆけば、ツキノワグマごとき、私の敵では ない!!
そうだ、目を見るのだ!
窮地に追い込まれた人間は何をしでかすか分かりません。
いざ、突撃!
アムロ、いきまーーーーqあwせdrftgyふじこlp※☆ーーーー
敵の目を睨み付け、ありったけの声を出そうと思った瞬間、
敵の目?
ん?
ホモサピエンス!!!!
ぎょえーーーーーーー
うそーーーーーーん。
おばちゃん、あのね。
きっとおばちゃんはいい人なんだと思う。
近所の人ともうまくお付き合いして、
庭でできた野菜とかも、「トウモロコシ採れたから食べてーーー」
とか言いながら近所におすそ分けしたり、
息子さんや娘さんはすでに結婚して一緒に暮らしてはいないんだろうけ ど、
旦那さんと仲良く、
畑仕事とかしながら、
夕方になると、どこからともなく集まってくるネコとお話しするんだろ うね。
知ってるよ。
おばちゃんがそんないい人だって知ってるよ。
でもね、それをすべて知った上で、それでもなおひとこと言いたい、
なぜ、ここで「黒ずくめ」なのかと・・・・
何故に「オー ルブラック」ですか?
何故に「WOMAN in BLACK」ですか?
あのね、おばちゃん。
ここは佐々里峠の奥深く。
見ての通り、車もほとんど通らないよね。
ましてや人なんて、
通るような所じゃないよね。うん。
そんな場所で真っ黒なお洋服を着て、
真っ黒なほっかぶりをして、
道ばたで屈んでたら、
みんなどう思うか分かるよね。
ね?
分かるよね?
まだまだ言いたいことはたくさんある。
怒りと謎だらけだわ。
どうやってここまで来たんです か?
そこで何してるんですか?
それは雑草ですか、山菜ですか?
(すべて半ギレ)
クマと戦わずにすんだという安堵の気持ちと、
「まぎらわしぃんじゃい!」という溢れ出る怒りを抑えながら、
おばちゃんの横を通り過ぎるのでありました。
一瞬の出来事だったけど、本当に疲れた。
お願いですから、そんな格好で山菜採らないで下さい。
本当に。お願いします。
はぁ。
おばちゃんを通り過ぎて、緩いカーブを曲がった先に、1台の軽BOXワゴ ンが停まってました、
真っ黒のね。
どこまで黒好きなんじゃぃ!!
ったく。